AIの答えが毎回違うのはなぜ?確率と“温度”で決まる仕組みを5分で解説

AIを使っていると、ふとした疑問が浮かぶことがあります。

「さっきと同じ質問をしたのに、返ってきた答えが微妙に違う……」
「昨日はあんなに詳しく教えてくれたのに、今日はあっさりしている気がする」

実はこれ、AIが故障しているわけでも、その日の気分で手を抜いているわけでもありません。
AIが言葉を紡ぎ出すプロセスには、人間とは全く異なる「確率の計算」と「あえて揺らぎを作る設定」が組み込まれているからです。

今回は、AIの回答が毎回変わる背景にある3つの主な理由と、それを踏まえた上手な付き合い方についてお話しします。

AIは「正解」を探しているのではなく「確率」で選んでいる

まず知っておきたいのは、ChatGPTやGeminiといったAI(大規模言語モデル)は、辞書や百科事典のように「決まった答えを引用している」のではないということです。

AIの正体は、膨大なデータから「この言葉の次には、どの言葉が来るのが自然か?」を予測する超高性能な連想ゲーム機のようなものです。

例えば、「昔々あるところに……」という書き出しに対して、AIは次に続く言葉の候補をいくつか計算します。

  • おじいさんと(確率70%)
  • 一人の男が(確率20%)
  • 不思議な(確率10%)

ここでAIは、必ずしも1位の「おじいさんと」だけを選ぶわけではありません。
毎回100%同じ「最も確率の高い言葉」だけを選び続けると、回答が非常に単調で、人間味のない機械的な文章になってしまうからです。

あえて2位や3位の選択肢を混ぜることで、AIは文脈に応じた多様な表現を可能にしています。

AIが次の単語を確率で選ぶ仕組みを示したインフォグラフィック。「昔々あるところに...」という入力に対し、70%の確率の「おじいさんと」、20%の「一人の男が」、10%の「不思議な」という複数の選択肢から、ランダムに単語が選ばれて文章が作られる流れを説明する図。

回答の「自由度」を決める「温度(Temperature)」の存在

AIには、回答のランダム性をコントロールするための「Temperature(温度)」という設定値があります。
これは、AIの創造性の蛇口のようなものです。

  • 温度が低い(0に近い):
    確率が最も高い言葉を厳格に選ぶ「慎重モード」。
    回答は安定しますが、面白みに欠けることがあります。
  • 温度が高い(1に近い):
    確率が低い言葉も積極的に採用する「クリエイティブモード」。
    独創的なアイデアが出やすくなりますが、回答の揺れは大きくなります。

私たちがブラウザやアプリで利用する一般的なチャットAIは、用途に応じて“温度”や出力の安定性が調整されており、自然さと一貫性のバランスが取られています。
そのため、同じ質問を投げても、その都度「どの単語をピックアップするか」のサイコロが振られ、結果として異なる回答が生成されるのです。


計算機(GPU)の並列処理による「物理的な揺らぎ」

これは少し専門的なお話になりますが、AIを動かしているハードウェア(GPU)の仕組みも関係しています。

現代のAIは、数兆回という膨大な計算を同時に(並列に)処理しています。
このとき、計算の順番がほんのわずかに前後するだけで、内部的な数値に「1兆分の1」レベルの極めて微細な誤差が生じることがあります。

ごくわずかな内部の数値差やサンプリングの違いが、最終的な単語選択に影響し、出力が変わることがあります。


AIの回答が揺れることを「逆手に取る」活用術

「答えが変わる」というのは、一見すると不便に思えるかもしれません。
しかし、これを理解していればAIをより便利に使いこなせます。

納得がいかないときは「再生成」

一度の回答がイマイチだったとしても、それは「たまたま引いた確率」の結果かもしれません。
「回答を再生成(Regenerate)」ボタンを押すことで、AIは別の確率の組み合わせで新しい答えを提示してくれます。

アイデア出しには最高のアシスタント

毎回違う答えが出る特性は、キャッチコピーの案出しや企画のブレインストーミングに最適です。
「他にも案を出して」と頼むたびに、AIは確率の海から異なる視点を持ってきてくれます。


FAQ:よくある疑問

Q
AIの答えを毎回同じに固定することはできますか?
A

通常のチャット画面では難しいですが、開発者向けのAPIなどを利用すれば「温度」の設定を0にすることで、かなり一貫性のある回答を得ることが可能です。
ただし、それでも前述の計算上の揺らぎで完全に一致しないケースもあります。


Q
答えが違うと、嘘(ハルシネーション)をつく確率も変わりますか?
A

はい。ランダム性が高まると、事実に基づかない「それらしい嘘」を生成する可能性も上がります。
重要な事実は必ず複数の情報源で確認しましょう。


Q
同じ質問なのに、回答がすごく長かったり短かったりするのはなぜですか?
A

AIがその時々に選ぶ「最初の数語」によって、その後に続く文脈の広がり方が変わるためです。
例えば、最初に「結論から言えば……」と書き始めると短くまとまりやすく、「背景から説明すると……」と書き始めると解説が長くなる傾向があります。
回答のボリュームを安定させたい場合は、プロンプトに「300文字程度で」「箇条書きで3つ」といった具体的な制約を加えるのが効果的です。


まとめ:AIの「揺らぎ」は創造性の源

AIの回答が毎回違うのは、以下の3つの理由からでした。

  1. 「正解」ではなく「確率」で次の言葉を選んでいるから
  2. 「温度」設定によって、あえてランダム性を持たせているから
  3. 計算機の並列処理による物理的な微細な誤差があるから

AIは、過去の膨大な知識をベースにしつつも、その瞬間に新しい文章を「組み立てて」います。
この揺らぎがあるからこそ、私たちはAIと対話をし、新しい発見を得ることができるのです。

「次はどんな答えが返ってくるかな?」と、その変化を楽しんでみる。
そんな余裕を持つことが、AIと上手に付き合っていくための第一歩かもしれません。