AI PCの心臓部であるIntel Core Ultraは、わずか数年の間に「シリーズ1」から最新の「シリーズ3」まで急速な進化を遂げました。
性能が向上する一方で、モデルによっては「購入後にメモリを増やせない」など、従来のパソコン選びの常識が通用しないケースも出ています。
特にノートパソコンを検討している方にとって、世代ごとの構造の違いを知っておくことは、数年後の「動作の重さ」に直結する重要なポイントです。
今回は、Core Ultraの世代の見分け方と、知っておくべきメモリ構造の注意点について解説します。
Core Ultraの世代(シリーズ)と見分け方
Core Ultraには現在、大きく分けて3つの世代があります。
それぞれの主な特徴と、AI処理能力の指標である「NPU性能(TOPS)」の違いを整理しました。
| 世代 | 主な型番の例 | NPU性能 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| シリーズ1 | Core Ultra 7 155H | 約11TOPS | AI PCの初期モデル。 NPUを初搭載。 |
| シリーズ2 | Core Ultra 7 258V | 約48TOPS | 性能が劇的に向上。 「Copilot+ PC」に完全対応。 |
| シリーズ3 | Core Ultra 300番台 | 約50TOPS以上 | 2026年登場の最新世代。 さらなる省電力と効率化。 |
型番での見分け方
CPUの名称に含まれる数字の先頭を見ることで世代を判別できます。
- 100番台:シリーズ1(例:155H)
- 200番台:シリーズ2(例:258V)
- 300番台:シリーズ3(例:365Hなど)
「AI PC」としての恩恵をフルに受けるなら、Windowsの最新AI機能が動作する基準(40 TOPS以上)をクリアした「シリーズ2」以降がおすすめです。
シリーズ2(200V)で採用された「メモリ合体型」の仕組み
シリーズ2のノートパソコン向けモデル(型番の末尾が「V」のもの)には、特殊な構造が採用されています。
それが、CPUとメモリを一つのパッケージに詰め込んだ「メモリ・オン・パッケージ」です。
メモリ・オン・パッケージ(MoP):
CPUとメモリを別々の部品として基板に配置するのではなく、一つのチップの中に密着させて配置する構造のことです。
合体型のメリット:高速処理と省エネ
この構造の最大の利点は、データが移動する距離が物理的に最短になることです。
- 反応速度の向上:
大量のデータをやり取りするAI処理において、渋滞が起きにくくなります - バッテリー持ちの改善:
通信にかかる電力が大幅に削減され、ノートパソコンの駆動時間が大きく伸びる要因となりました
合体型のデメリット:増設という選択肢の消滅
この構造には、ユーザーが後から変更できないという決定的な注意点があります。
- 増設が物理的に不可能:
メモリがCPUと一体化しているため、後から「メモリを8GBから16GBに増やす」といった改造は一切できません - 購入時の選択がそのままの限界容量に:
買った瞬間のスペックが、そのパソコンの上限となります
シリーズ3(Panther Lake)における方針の転換
最新の「シリーズ3」では、Intelはこの「メモリ合体型」をやめ、再びメモリをCPUの外に出す「分離型」をメインに採用しました。
なぜ「分離」に戻ったのか
シリーズ2で採用された合体型は性能面では優れていましたが以下の課題がありました。
- メーカー側の自由度の低下:
パソコンメーカーが「このモデルに64GBのメモリを積みたい」といったカスタマイズがしにくかった点 - 製造コストと修理の難しさ:
CPUとメモリがセットのため、一方が故障した際の修理費用が高額になりやすいという側面がありました
シリーズ3ではメモリが独立したことで、将来的にメモリの交換や増設ができる設計のノートパソコンが増えることが期待されています。
後からメモリを増やせない「メモリ合体型」のモデルを検討中なら、最初から十分な容量を積んだ機種を選ぶのが賢明です。
こちらの記事では、AI作業もサクサクこなせる「メモリ32GB搭載」のおすすめモデルを紹介しています。
FAQ(よくある質問)
- Qシリーズ2の「V」がつくモデルは避けたほうがいいですか?
- A
いいえ、避ける必要はありません。
「薄さ・軽さ・バッテリーの持ち」を最優先するなら、シリーズ2(Vシリーズ)は非常に優秀です。
ただし、必ず「32GBメモリ搭載モデル」を選ぶようにしてください。
- Qシリーズ3を待つべきでしょうか?
- A
将来的に自分でメモリを増やしたい、あるいは64GBなどの大容量メモリが必要な作業(プロレベルの動画編集など)をする予定があるなら、シリーズ3の分離型モデルを待つ価値があります。
- Qメモリ16GBと32GBで、AIの回答精度は変わりますか?
- A
回答の内容(知能)自体は変わりませんが、「処理のスピード」と「同時にできる作業量」は大きく変わります。
メモリが不足するとAIの返答が極端に遅くなるため、快適さに直結します。
まとめ:後悔しないためのスペック選び
Core Ultra搭載PCを選ぶ際は、CPUの「世代」だけでなく「メモリが後から増やせるかどうか」を確認することが重要です。
- シリーズ2(200Vモデル):
「合体型」で高速・省エネ。ただし増設不可。購入時に32GBを選ぶのが鉄則です - シリーズ3(300番台):
「分離型」が主流。カスタマイズ性や将来的な増設の余地があるモデルが増えます
「安かったから16GBモデルにしたけれど、1年後にAIが重くて使い物にならない」という事態を避けるためにも、自分の用途に合った世代とメモリ構造を慎重に選びましょう。
次回の最終記事では、Core Ultra 5 / 7 / 9 の具体的な性能差と、あなたに最適なモデルの判断基準を整理します。

